序章──水の都に流れる“不滅”の響き
『不滅のあなたへ』(To Your Eternity)は、大今良時女史が描く壮大な生命讃歌です。舞台の一つ「水の都」は、流れ続ける水のように変転する人間の生を象徴します。都市の水路は記憶の回廊であり、フシの歩みを支える大河のように、物語を静かに潤していきます。
第一章──三つの大河:命・記憶・愛
前作『聲の形』で“大切なものは目に見えにくい”と示した大今女史は、本作で視野をさらに拡げ、命・記憶・愛という三つの大河を流します。
- 命:生と死の循環を超えた存在としてのフシ。
- 記憶:出会いと別れが積み重なり心に刻まれる。
- 愛:人と“不滅”を繋ぐ、最も強く最も儚い力。
第二章──理事長と園長の議論:無限をめぐって
園長:「水の都の流れを見ていると、思い出すのは日本の天才・関孝和先生じゃな。」
理事長:「“無限級数”の概念を発想し、近代数学の扉を開いた方ですね。」
園長:「ニュートンやライプニッツが微積分の父と呼ばれるが、史実を掘れば、関孝和がわずかに早かったことが示されておる。」
理事長:「日本人は“西欧人には勝てない”という誤解を受けがちですが、とんでもない。関孝和は日本が誇る超一級の思想家、学者です。」
園長:大今女史の郷里岐阜県大垣市は、戦前までは水道蛇口に栓というものが無く、水は常に流れっ放し、水は不滅の資源だった。関孝和先生の郷里も大垣市の隣町・関市じゃったから、お二人とも、郷土の清流により「無限」の着想が育まれたんじゃな。欧州のライプニッツにライン川があったように、大今、関には木曽三川があったんじゃな~。」
「無限」について書籍でもっと知りたい人は こちら。
第三章──“無限”と“不滅”の交差点
無限級数という概念で、人が「無限」を手に取れるようにした関孝和。
“不滅”を物語として、人が受け止められるようにした大今良時。
ジャンルも時代も異なる二人の創造は、いずれも「人間の限界を超える智恵」に通じています。
第四章──木曽三川と無限の循環
桑名駅に近いJRの鉄橋から見下ろす木曽川と長良川・揖斐川──その流れは決して一度きりの水ではありません。数千万回のいや数えきれない悠久の循環を経て、太平洋へ抱かれ、蒸気となり、雲となり、雨となって源流へ戻ってきた“永遠の旅人”なのです。
やがて太平洋に抱かれ、水蒸気となって天に昇り、
雨となって三川の源流に降り注ぐ。
──これこそ、無限の極致である。
ライプニッツの生涯の仕事に影響をあたえたであろうライン川
花咲爺のひとりごと(動画+音源)
「桑名市の三川鉄橋を渡るとき、爺は自然と涙がにじみ出る…。生物の命をつなぐ絶対的物質「水」。神様が川を通じて与え続けてくださる水資源。今とおとおと眼下に無限の流れを流れている。有難くて涙を禁じ得ないんじゃ。戦争で大砲なんか打ち合ってれば気候も変わり、いつか川の水が渇れるかもしれん。現に中国の大河「黄河」はときどき断流が起こって、海まで水がながれてこなくなることがあるらしい。地球の営みは不滅でなければならない。
Didgeridooをぶお〜んと吹けば、水の精霊も微笑んでくれるかもしれんがのう。」
まとめ──日本発、世界級の“不滅”
「不滅」とは遠い彼方の概念ではなく、水が循環するように、命も記憶も愛もまた循環するという気づきです。木曽三川とライン川、関孝和と大今良時とライプニッツ──大河と偉才の交差点で、人は「不滅」に触れるのです。
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